恋愛したことないけど、恋愛小説を書いてみる。

こんちは!
みなさん「恋愛」していますか!? 『恋愛』!!
僕は恋愛なんぞ糞食らえ、いや、うんちでもお召し上がりになってほしい程に恋愛経験がありません。
そんな、恋愛の経験値がコラッタ程しかない僕が恋愛小説を書くとどうなるのか・・・
 
「小説を書くには経験をしろ」という言葉がある程なので(今作った)、やはり経験が必要なはず。
しかしそこは持ち前の妄想力で補ってみたいと思います。
読者さんの中には「どうせ結局下ネタ小説になるんだろ」と思っている方もいるかと思います。
しかし! 今回ばかりは真剣に! 真剣に書かせていただきたいと思います。
 
それでは僕の、甘い甘い恋愛小説を、(長いので時間のある時に)どうぞ!
 
 
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『リミット』
 
 
 
「僕は物語の終わりが好きだ」
 
まだ4月の上旬だというのに、巨大な高気圧は5月下旬の気温を叩き出した。
冬から春への移り変わりに、季節も四苦八苦しているのだろう。
昨日はとても寒かっただけに、そのギャップを感じる。
 
少し汗ばむほどの心地よい暖かさの電車内。時間はまだ人気の少ない15時半ちょうどだった。
うとうとする老人、蚊くらいなら殺せそうな大声で笑う夫人、学校帰りの学生、
様々な人間が思い思いに目的地までの時間を過ごすこの時間帯の電車内。
僕はこの雰囲気が好きだった。
皆がみな、好きな事をしているということは僕も例外ではなく、僕はつい先程読み終わった小説を握り締めながら窓の外の流れる景色をぼうっと眺めていた。
物語の余韻を楽しんでいたのだ。
 
「終わり良ければ全てよし」とはよく言ったもので、僕は物語の終わりがとても好きだった。
小説も最後まで読んでしまうと、こうして物語が終わった余韻にひたる。
今までの主人公の奮闘、苦悩、戦いが全て昇華されるハッピーエンド。
ハッピーエンドを味わっている時こそ、至福の時間なのである。
 
僕が読んでいた小説は、全くモテない男子高校生・・・まあ僕のような人間が、ある女性と運命を出会いをして、色々あって結ばれる。
そんな他愛もない、ひねりも結び目もほつれも無い恋愛小説だった。
しかし、小説というものは不思議なもので、読んでいるうちにだんだんと引きこまれていってしまう。
最初は「こんな普通の小説」と半分馬鹿にしながら読んでいた僕も、
小説終盤、ヒロインの父親に主人公が会いに行くシーンでは、まるで自分の愛人の父親に会いに行くような緊張があった。
僕には愛人なんぞいないけど。 ちくしょう。
 
小説を読んだ事のある人ならばわかるだろうが、小説に出てくるヒロインは、多少は小説内で容姿の説明はあれど、結局は頭の中で自分のタイプの女性になってしまうものだろう。
以前、小説好きの友人とこの会話した時、友人は「わかるわかる」と鼻をフンフン言わせながら言い、しまいには鼻血を出した。ここまで来ると病気ではないか。
しかし僕も病気の一歩手前。熱で言うと36.8くらいだろうか、ヒロインが可愛くて仕方なくなってしまったのだ。
その小説のヒロインは、身長は僕より少し低く、髪は黒くて長い。清楚で可憐で紅茶が似合う・・・
そんな一般男性が夢見る典型のような女性であった。
・・・例えばそう、今僕の隣に座って来たこの女の人なんかがそのイメージにピッタリだ。って、え?
え?
  
「・・・・・っ」
僕は心臓が口から飛び出しそうになった。
小説の中の僕の理想像にピタリと当てはまる女性が僕の隣に座っているのだ。
身長は僕より少し低く、髪は黒くて長い。清楚で可憐で紅茶が似合う。そんな一般男性が夢見る典型のような女性が。
大抵「そんな人いるわけない」と言われ馬鹿にされるような理想像の女性が、いる。
これは夢か幻想か、小説の中からヒロインが飛び出してきたのか。
それとも僕が小説世界の住人となったのか。
前者は違うだろう、ヒロインは彼氏である主人公と結婚し10人の子供を生んでおり、いささか産み過ぎではないか。という疑問を読者全員に持たせたのだから。
後者ももちろん違うだろう。そんなメルヘンな事があってたまるか。
小説世界へ気軽に行けるならば、官能小説を夜な夜な枕の下に入れて寝ていた僕の高校生活を返してほしい。
残るは「現実」という非現実。夢ではない。
 
高鳴る心臓はまるで別の生き物のようにブレイクダンスを踊り、手からが滝のような汗が出て、握っていた小説はよれてしまった。
そんな溶岩ほどばしる僕とは対照的に、彼女は穏やかな川のせせらぎのように落ち着いている。
足して2で割ればちょうどよい温泉にでもなろう。
 
「ここで話しかければお友達に、上手くいけばお付き合いできるかもしれない」
そんな考えが脳裏をよぎったのは、人間の男として当然だろう。
読んでいた小説の登場人物と瓜二つ、いや、瓜五つ程の女性と出会えたのは、言うまでもない運命だろう。運命だ。
僕は意を決して彼女に話しかけることにした。
汗ばむ手をズボンで拭き、呼吸を整えた。
様子をうかがうために、チラリと、駅名を見るようなそぶりで彼女を見た。
彼女は携帯電話でメールか何かを打ち込んでいる。
さしずめお友達へのお茶会へのお誘いのメールだろう。ここまで来ると「おメール」と読んだ方がいいのかもしれない。
そんなくだらない事を考える余裕があるということは、心が落ち着いてきたということだ。僕は安心した。
 
安心すると、話しかけるよりも前に、彼女について知りたくなってしまった。人間の探究心とは恐ろしいものである。
彼女の名前、年齢、声色、口癖、好きなお菓子、好きなタイプ、小説の住人なのかという真偽…数えてもキリがない。
彼女についてを知るためには情報が必要だった。
つまりはその、僕は彼女の携帯電話のメール内容を知りたかったのである。
ここまで来ると人間の尊厳を失う気がした。メールとはいえ、他人の文通を検閲がごとき監視するなど言語道断。
しかし一応、一応、私は人間の「探究心」と人間の「自制心」をてんびんにかけてみたのだ。
すると「探究心」が気持ち良い程に圧勝した。 茶番もいいとこである。
 
僕は、横目でさりげなく、そして空気の流れに身をまかせるようにゆっくりと、彼女の携帯の画面へ目をやった。
一体誰とお茶会をするんだ。紅茶の銘柄は。ミルクは入れるのか。そんな予想をしながら画面に目をやると、
そこには、こう書いてあった。
 
 
「頑張って! ウルトラ肛門ファイト!!!
 
 
え?
  
もう一度私は、しっかりと、携帯を見る。
 
 
「頑張って! ウルトラ肛門ファイト!!!」 
 
 
え! なにこれ!?
 
ちょちょちょ、整理をさせて欲しい。
まず文頭の「頑張れ」。これは人を励ます言葉であるというは私でもわかる。
「ウルトラ」は外国語で「超〜」という具合に使われる。これもわかる。
では、「肛門ファイト」とは何であろうか。
人里離れた名もない国で4年に一度、屈強な男たちが集まり、村の作物の豊作を願い、肛門ファイトをするという。という伝説のたぐいかもしれない。
誰かに応援するにしても、もっと他にあるだろう。なぜそのチョイスをしたのか。 
 
気が付くと、「彼女へ話しかける」という選択肢は消え、僕には肛門ファイトの事だけが頭に残った。
と、同時に彼女への愛のタワーは崩れ去り、僕の心には男達の肛門ファイトの宴がこだましていた。
 
そんな15時30分。今日は気温がすこぶる高い。
 
 
「僕は物語の終わりが好きだ。」
「しかし、恋物語の終わりは嫌いだ。」
物には「限度」がある。
 
 
『リミット』【完】
 
 
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はい! いかがでしたでしょうか!?
人には見かけによらないのです。 
僕だって普段は、クソ真面目な大学生みたいな格好をしていますからね!
 
同一人物
 
見かけに騙されてはいけない。 そんな事を学んでいただけたら幸いです!
っていうか結局下ネタでしたしね。 もう本当ごめんなさい。 ごめんなサイコメトラー
 
それでは、今日はこのへんで失礼します!
ではまた!