小説風日記

ここは千葉県某所。
駅から数十分程離れると一面のネギ畑が広がるこの土地に、小さな住宅街がある。
その一角にARuFaという青年が住む家がある。おや、ちょうど彼の寝室の窓が開いたようだ。
 
ガラッ
ARuFa 「・・・・パイ毛、抜くと血が出る!」
ピシャ
彼は今、早朝に窓を開けて周りを確認した後、そこから非常に知的レベルの低い言葉を言い、すぐさま窓を閉めるという行為にはまりつつある。
つい2日程前は、「尻毛、抜くとヒリヒリ!」という言葉を、朝もやのかかる町内に言い放っている現場を、実の妹に目撃されたばかりだというのにこりない男である。
「ばれるかバレないかのスリルが俺を興奮させる。」と、彼は言うが、それは完璧なる露出狂の言い分だ。 
彼の一日が今日も始まる。
 
2階から1階へ続く急な階段をどたどたと降り、リビングへ入る。
リビングに入ると彼の妹である高校一年生の長女が髪をとかしていた。
この妹は大変凶暴であり、ARuFaも今まで何度命を奪われかけたかわからない。
先週の深夜も、彼女は寝言で「貫く。」と一言だけつぶやき、その兄の背筋を凍らせた。兄はエロサイトを見ていた。
そんな彼の妹は、兄を見るなり尋ねた。
長女 「本当におしっこしてないの?」
ARuFa「してないって言ってるでしょ! アホか!」
この「おしっこ」うんぬんという話は、つい3日前の夜にさかのぼる。
長女が寝ぼけてARuFaの幻覚を見たのだ。
長女が言うには、深夜、水の流れるような音で目を覚ました彼女はゆっくり周りを見回した。
すると、彼女の兄であるARuFaが、自分の部屋の中でペットボトルにおしっこを入れ、それをベランダにある植木鉢の花にやっていた、と言うのだ。
ARuFa 「大体、ペットボトルの口に入るチンチンってどんだけ小さいんだよ!」
長女 「確かに。 やっぱり寝ぼけてたのかも。」
彼女は納得したが、3日前の深夜を境に植木鉢の中の雑草の花が全て枯れたのは何故か。その答えは読者の皆さまにお任せする。
そして、彼のチンチンは先端ならば、ペットボトルの口にギリギリ入るという事もここに添えておこう。
やりました。
  
妹とくだらないやり取りをしていると、そろそろ大学へ行く時間である。
彼は朝食の代わりに牛乳をいっぱい飲んで家を飛び出し、そして腹を壊して途中下車をした。
腹の痛い時程、健康体の自分がどれだけ幸せかを考える事は無い。
彼は、学校へ遅刻することも気にせず、途中下車した駅のトイレへ駆け込んだ。
そして、ボンバータイム。 今日の彼のソレはボンバーマンで例えるならPボムであった。
Pボムを投下した後、彼は絶句した。トイレットペーパーが無いのだ。
ARuFa「・・・・・・・・別に・・・・洗えば・・・いやいやいやいや、」
彼は自分の右手を見つめ、案外いけるかもと思った自分の心を押し殺した。
しばらく彼は洋式トイレの便座に座って考え込んだ。
「パンツで拭く」「尻を出したまま隣の個室で移動する」「何食わぬ顔でズボンをはく」などの案は出たが、どれを選んでも待っているのは社会的な死である。
しかし、最終手段の右手を尻へ伸ばしたその瞬間、隣の個室に人が入る音がした。
これはチャンスである。 彼は隣の見知らぬ男性に助けを求めた。
ARuFa「あのー、すみません! 紙頂けませんか!?」
隣  「・・・・・」
ARuFa「あのーー!!」
隣  「え!? 僕ですか?」
隣人は、まさか自分が話しかけられているとは思っていなかったようで、大変驚いていた。
 
ARuFa「あの、紙をいただけませんか?」
隣  「え、ああ、はい。 いいですけど。 下の隙間から出しますよ。」
ARuFa「ありがとうございます! 助かります。」
そう言ってお礼を言った瞬間、個室の下の隙間から飛び出て来たのはメモ帳であった。
ARuFa「なんでやねん。」
つい声が出てしまっていた。 この状況下でメモ帳をどう使えというのか。遺書でも書けというのか。
 
ARuFa「あの、トイレットペーパーを頂きたいのですが。」
彼が怒りを押し殺して言うと、隣人はかなり大げさに謝り、そして天井とドアの隙間からトイレットペーパーを投げてくれた。
隣人 「すみません! てっきり何かメモるのかと・・・」
ARuFa「どちらかというとモメていましたね。」
尻を拭いた彼は、本調子を取り戻し、学校へ向かった。
現物
ちなみにこれがトイレでもらったメモ帳である。 撮影後、燃した。
 
学校へ到着し、教室に滑り込むと授業開始時間は1分程過ぎていたが、教師はまだ来ていなかった。
彼はガッツポーズをしながら席に着く。
この授業は「国語」そして第一回目の授業である。
50代くらいの女性教師の『文字を書くのは好きですか?』との質問に彼は勢いよく「はい!好きです!」と答えた。教室がざわつく。
 
教師 「あら元気ねー。何か書き物でもしてるの? 小説とか。」
ARuFa「日記を6年間書いています!!」
教師 「あら、すごい!!!」
日記とは、無論この日記の事である。
 
教師 「どういうことを書いているの?」
ARuFa「その日の出来事とか、した事とかを書いています。」
教師 「まあ! 素敵!」
教師に大変気に入られたようでARuFaも満足である。
しかし同時に「今度見せてね」と言われ、絶対絶命である。
 
学校が終わった後、彼は、友人のラユ氏、ダイ氏と共に帰路についた。
学校から駅までは、「エアモーグル」という謎の遊びを開発し、それを実践しつつ駅まで向かった。
エアモーグルとは、雪上スポーツである「モーグル」を路上で行うという誰も得をしない遊びである。

 
常に足をボインボインさせ、そして10歩に一回は技を決めなくてはいけない。
炎天下の中、この遊びをするというのは己の命を削ることと同等。
同級生の不審な視線を浴びながら、彼は見事エアモーグル選手権で1位を勝ち取った。エントリーは彼のみである。
 
電車の中では、3人でさらに無意味な会話をした。
俺 「単語を少しずつ変えて言って、ある言葉に行きつけよう!」
ラユ「じゃあ、『まんじゅう』から初めて、ゴールは『マンホール』な。」
俺 「『まんじゅう』・・・『にゃんちゅう』」
ラユ「『ハイチュウ』」
ダイ「『ライチュウ』」
俺 「『ライ麦畑で捕まえて』」
ラユ「いや、遠すぎるだろ。」
ダイ「『マンホール』っていうゴールが難しすぎるよ! もっと簡単なのからにしよう!」
俺 「じゃあ、『Tバック』から初めて、『T-BOLAN』がゴールね。」
ラユ「それ、もう隣だよね。」
T-BOLAN
このような無意味な会話をしているひと時はとても幸せなものである。しかし記憶に残りにくいのが難点であり、日記を書くにあたり、T-BOLANを思い出すまでに20分かかった。
 
家に帰ると、学校やエアモーグルで疲れてしまったのか、彼はそそくさと自室のベッドの上に倒れ込んだ。
薄く、跳ねのけられた布団を抱きながら、彼は目を閉じる。
 
22時頃、私は目を覚ました。
そして現在この日記を書いているに至る。
深夜帯の更新ということで、眠気覚ましと無駄毛の処理をかねて自分のパイ毛を抜いてみた。
激痛により眠気は吹き飛び、見ると少し血が滲んでいる。
「パイ毛、抜くと血が出る。」
私はそうつぶやき、後ろで寝ている長女の鼻の上にパイ毛をふわりと乗せた。