注射 DE 恐怖

本日、10月21日。
この日、僕等にはある【恐怖のイベント】が待ち構えていました。
それは、人類のほとんどが幼少期からのトラウマを持ち続け、そしてできるだけ避けて通りたいイベント。
しかし、絶対に避けられないイベント。
そう・・・「注射」です。
大学2年生、20歳になった僕ですが注射はまだまだ大の苦手・・・。
例えるならば、すき焼きに入っている春菊、サラダのセロリ、全裸のおかんよりも苦手です。
今日はそんな大嫌いな注射を、僕よりも注射が大嫌いな友達と一緒にしてきたので、その様子を書かせて頂きます。
では、どうぞ!
 
――――――――――――― 
 
今回の注射は、「はしか抗体検査」という名目での注射です。(採血)
「はしか」という病気に対する抗体を、その人が持っているかどうかを検査するために、注射で採血(血を抜く)をして検査をするそうです。
はしかは歳をとって発症するほど症状が重くなりますからね。早いうちからの検査が大切なのだそうです。
僕は既にはしかの予防接種をしてあるので検査にひっかかることはまず無いのですが、
学校からの命令で、僕の所属する学科の学生全員が検査をしなくてはいけなくなったため、今日注射をされることになってしまいました。
不服です。非常に不服です。
 
そして、そんな僕と同じ境遇の友達が4人。
今日はこの4人と一緒に検査を受けます。

左から、トモ君、ナミ君、俺、ダイ君です。
人物紹介もさせていただきますと、
 
ナミ:  イケメン。イケメンなのにモテ無い。ざまあみろ。
トモ:  静かな笑いをじわじわと空間に浸透させる。ヒヨコのモノマネが上手い。
ダイ:  俳優志望のドリーマー。今日は一段と顔色が悪い。
俺 :  うんこ大好き。
 
と、言う感じです。
この4人に総じていえるのは、「注射が嫌い」ということ。
僕等は恐怖を共有するように、仲良く一緒に大学付属の病院へ行きました。
がら〜ん
病院内にお客さんは一人もいませんでした。
つまりは注射までの待ち時間が無いという事です。 地獄へのカウントダウンが早いのです。
まずは受付を済ませます。
 
受付。
受付「はい、席でお待ちください。」
 
僕等はプルプルと震えながら受付に学生証を渡し、待合室で談笑をしながら順番を待つことにしました。
緊張を緩和させるには会話が一番ですかね。僕等はいつもよりも元気いっぱいに話をしました。
 

俺 「いやぁ〜、この注射、相当痛いらしいな!」
トモ「だね! 血はどのくらい抜かれるんかね?」
俺 「50リットルくらいじゃない?」
ナミ「ミイラじゃねーかwwwwwwww」
俺 「あと、針の太さが直径50cmらしい・・・」
トモ「なにそれ、魔貫光殺砲?」
ナミ「wwwwwwwwwwww」
 
こんな感じで話し合い、そして笑いあううちに僕等の恐怖や緊張は無くなりました。
しかし、一人だけ浮かない顔の人がいます、
 

 

ダイ君です。
 
会話も耳に入っていないようで、質問をしても空返事。相当注射が怖いようです。
しかし注射を怖がっているダイ君はいつもの雰囲気とは違い、少し可愛く見えました。
その姿に感動した僕等は、何だかよくわからない感情が渦を巻き、そしてダイ君を抜いた3人で話し合った結果、
「ダイ君を極限まで怖がらせよう」という、鬼のような作戦が立てられました。
 
運の良い事に、ダイ君の注射のタイミングは一番最後。
先に注射をする僕等がわざと散々痛がり、順番を待つダイ君を怖がらせる作戦です。
 
そんな事を話していると、最初の注射の犠牲者がナースさんに呼ばれました。

 
ナ 「トモさ〜ん。どうぞ〜」
トモ「あ、はーい! じゃ、行ってくるな!」
トップバッターのトモ君は勢いよく席を立ち、爽やかに処置室へ向かいました。
そして、少し歩いて振りかえり、ダイ君に呼びかけます。
 
トモ「・・・あっ、そうだ! ダイ!」
ダイ「え?」
トモ「注射が痛くないってことを、俺が証明してやるよ!」
トモ君
ダイ「ありがとう・・・!」
トモ「じゃ、行ってくるね!!」
 
そして、トモ君は処置室に消えていきました。

 
俺 「ダイ・・・どうだ? 落ち着いたか?」
ダイ「うん。ありがとう。」
ナミ「よかったな・・・!」
 
しかし! 次の瞬間。
 

!?
トモ「ぐぁああああああああああ!!!!!
トモ君の悲鳴が。
 
ダイ「!!?」
俺 「お、おい今・・・友の悲鳴だよな・・・」
ナミ「間違いない・・・大丈夫かな・・・」
 
ガラ・・・
俺 「あ、出てきた!」
 
!!
そこには、変わり果てたトモ君の姿が。 
トモ「あうあう・・・うほほ・・・注射・・・・うおぼ・・・」
俺 「トモ! 大丈夫か!?」
トモ「・・・注射針・・・あう・・・・太い・・・あうあう・・・うおおえ」
ナミ「どこまで痛いんだこの注射は・・・」
 
あんなに爽やかだったトモ君が、おじいちゃんのように・・・
ふとダイ君の方を見ると、なんだかよくわからない顔で遠くを見ていました。

現実から目をそむけるとはこのことでしょう。 もはや彼は別世界へ行ってしまいました。
 
しかし、現実は残酷なもの。 次の注射の犠牲者としてナミ君が呼ばれてしまったのです。

ナ 「ナミさ〜ん。 どうぞ〜。」
ナミ「はい!」
俺 「生きて帰れよ・・・」
ダイ「・・・・」
ナミ「おう・・・あ、そうだダイ君!!」
ダイ「・・・え?」
 
ナミ
ナミ「大丈夫だって! 俺が痛くないことを証明してやるよ!」
ダイ「・・・・お、おう!」
俺 「頑張れよ!! ナミ!」
ナミ「じゃ、行ってくるわ!」
 
そしてナミ君は処置室へ入っていきました。
 

俺 「行っちゃったな・・・」
ダイ「大丈夫かね・・・」
俺 「多分大丈夫じゃない?」
しかし次の瞬間、僕等の希望は打ち砕かれます。
 
!!?
!!!!?
室内から謎の破裂音と共にヒヨコの鳴き声が。
 
ダイ君
謎の破裂音にダイ君は口あんぐり。
俺 「・・・産まれちゃったのか・・・?」
ダイ「え・・・・え・・・・」
 
がら
俺 「おいっ・・・大丈夫か!?」
 
ギャーン!
先程まであんなに元気だったナミ君が、ミイラのようになってしまいました。
ナミ「6つ子・・・・うう・・・・6つ子・・・・」
俺 「6つwwww・・・あ、おい、今夜はお赤飯だな!」
さすがにこれはふざけ過ぎです。 これではダイ君にバレてしまいます。
そんな心配をしながらダイ君をチラリと見てみたのですが、
 

まだ大丈夫そうです。
 
そしてお次は僕の番。 なんだかんだで緊張します。

ナ 「ARuFaさ〜ん。どうぞ。」
俺 「はい〜」
 
ダイ君は僕を寂しそうな目で見つめてたので、僕はそれに答えてあげました。
俺 「ダイ・・・」
ダイ「・・・なに?」
俺 「人生の選択には2つしかない。 逃げるか、逃げないか・・・だ。」
ダイ「・・・・」
俺 「・・・俺は、『逃げない』ぜ?」

 
俺 「あ、そうそう、」
 
フラグ
俺 「俺、この注射が終わったら、ヒナコに告白するんだっ!
はい死にました。 はい俺もう死にました。 死亡フラグです。
ちなみにヒナコとは僕の祖母の飼い猫の名前です。猫のために僕は死にます。
 
そして僕は処置室に入ります。
さて、待合室で僕を待つダイ君に何をしましょう。実は何も考えていなかったのです。
何かをしなければ・・・しかし何を・・・でももう注射されてしまう・・・
あわわわ
しかしそんなピンチに奇跡は起きました。
 
ナ 「では、血を抜きますね〜」
ナースさんがそう言った瞬間、
ドドドド
ありえない程の勢いで鼻血が吹き出しました。
 
ナ 「え〜・・・」
俺 「この鼻血って使えませんかね。」
ナ 「無理ですね。」
俺 「そうですか・・・」
ナ 「ティッシュどうぞ。」
俺 「どうも。 あ、ちょっと今からちょっと大きい声出しますけど、無視してくださいね。」
ナ 「はい。」
 
俺 「えっ お尻に!?
よし
 
俺 「・・・よし、失礼しました。ありがとうございます。」
ナ 「いえ。というか、そういう事を考えているから鼻血が出るんですよ。」
ごもっともです。
 
そして注射(採血)が終了。 全然痛くありませんでした。何これ。
僕は、待合室に一人残しているダイ君に怖がらせに処置室を出て待合室へ。
 
ガラッ
 
ギャーン!
俺 「ケーーーーーー!!!!!
 
ダイ「・・・・・・」
ダイ君
もう好きにしてくれよ、という感じでした。
 
そしてついにダイ君の番。

ナ 「ダイさ〜ん。どうぞ。」
ダイ「はい。」
 
僕等3人が精一杯、やるだけやったダイ君への恐怖体験の提供。
そのクライマックスに、ダイ君はさぞ恐怖に引きつった顔をしていると思いきや、
 

彼の顔は、なんとも平常心を保った顔でした。
そして処置室から笑顔で戻ってきたダイ君。一体何が起きたのでしょうか。
 
俺 「・・・怖くなかったの?」
ダイ「何か、怖さが一周して怖くなくなったんだよね!」
俺 「ふっきれたってこと?」
ダイ「そうだね!
 
・・・なんということでしょう。
極限まで怖がらせてやるつもりが、怖さを通り越して恐怖を打ち消してしまいました。
僕等は結局、ダイ君のために頑張ってしまったということですね。
こうなってくると、大量の鼻血を出した僕が一番の被害者のような気がします。
この後僕は、散々鼻血を出した事をからかわれた挙句、ちょっと泣いて家に帰りました。
他人にイジワルをすると自分にも返ってくるんだなぁと反省した次第です。
そんな教訓を、左腕の針の跡と共に刻み込みつつ、今日はこのへんで失礼いたします!

みなさんが注射をする際には、是非一人で病院に行った方がいいと思います。
では、今日はこのへんで!
ではまた!